【みんな知ってる?2】奥が深い!こだわり抜かれたウイスキーの作り方をご紹介
気になるのは、こんな繊細なお酒が、どのように作られているのかです。
ウイスキーってどうやって作られるの?
今回は、モルトウイスキーから、基本の作り方をお伝えします。
モルトウイスキーの作り方の流れ
- 【製麦】モルティング
大麦を発芽させ、大麦麦芽(モルト)にする。(ピートを大麦麦芽に炊き込む。) - 【糖化】マッシング
大麦麦芽を糖化させて、ウォート(麦汁)を作る。 - 【発酵】ファンメーテーション
ウォートを発酵させて、『ウォッシュ(もろみ)』にする。 - 【蒸留】ディスティレーション
もろみを単式蒸留器(ポットスチル)にかけ、スピリッツ(蒸留酒)を抽出させる。 - 【熟成】スピリッツを加水してから、樽に詰めて熟成させる。
- 瓶詰め作業。
多くの工程と、長い時間をかけて、ウイスキーは奥深い魅力的なお酒へと仕上がるのです。
【準備編】重要な原料
原料1『仕込み水』
どの工程にも、大量に水を使うため、エグ味や雑味があれば、ウイスキーの質・風味・香りを落としてしまいます。
多くの蒸留所は、ウイスキーの仕込み水に、科学的に調整している水道水ではなく、天然水を使用しています。
多くの蒸溜所が、穀物の成分を多く抽出するのに適した、軟水を持ち入りますが、中には硬水の性質を活かした製法をする所もあります。
原料2『穀物』
モルトウイスキーには、大麦麦芽が使用されます。
使用する大麦麦芽の種類は、二条・四条・六条の三種類に大きく分けられます。
モルトウイスキーで、主に使用されるのは、二条大麦です。
二条大麦は、粒が大きくデンプンやアミノ酸を、多く含んでいます。
原料3『酵母』
酵母は、糖分をアルコール成分と、炭酸ガスに分解する働きがあります。
また、酵母がウイスキーに与える、香りの考え方は、各蒸溜所で異なります。
だから、ウイスキーには、アルコール発酵を助けてくれる、酵母が必要不可欠なんです。
- ブリュワーズ酵母(ビール酵母)
……文字通り、ビールによく使用されている酵母。
元々は、ウイスキーとビールの原料が同じ麦だったため、このブリュワーズ酵母が使用されていました。 - ディスティラリー酵母(蒸留酒酵母)
……1950年代に、ウイスキーのために開発された酵母。
近年は、ビール酵母より、ディスティラー酵母を使用している蒸溜所が増えています。 - ベーカー酵母
……文字通り、パンで使用される酵母です。
ディスティラリー酵母は、ブリュワーズ酵母(ビール酵母)と違い、短い時間でアルコール収率が高い発酵能力を持っています。
近年のスコッチでは、酵母を専門とするケリーとマウリの2社が登場し、多くの蒸溜所は酵母を卸してもらう形です。
ビール会社関連が、ウイスキーを製造していることも多いのが、日本のウイスキーの特徴の1つです。
大手の場合、酵母も自社で研究し、各製品の特徴に合わせて酵母を使い分け、ウイスキーを作っています。
では、工程ごとにご紹介しましょう。
【工程1】大麦を発芽させる!モルティング(製麦)
この工程は、モルティング(製麦)と呼ばれる、ウイスキーには欠かすことのできない作業です。
- 『収穫』麦芽の準備
……収穫後、すぐに発芽しないので、1~2ヶ月休眠させておく。粒の大きさを2~3段階に分ける。分けることで、仕上がりを均一にさせる。 - 『浸麦』発芽の準備を整える
……浸麦槽(スティープ)に仕込み水を入れた後、大麦を浸して数時間後に空気に晒す。
この作業を『ウェット&ドライ』と呼び、2~3日繰り返すことで、発芽の準備を整える。 - 『撹拌』発芽させる
……湿度・温度が一定に管理された、発芽室へ大麦を集め、撹拌して空気を送り込み発芽を促す。5~7日間、絶えず撹拌させることで、芽が適切な長さに伸びる。
(※この状態の麦芽を、グリーンモルトと呼ぶ。) - 『乾燥』発芽を止める
……充分に発芽できれば、次はそれ以上に発芽しないように、乾燥室に移して、熱することで発芽を止める。この段階で、無煙炭やピートを、燃やしてモルトを乾燥させる。
近年の撹拌作業は、機械化されていることが多いです。
中には、伝統的な人力手法の、フロアモルティングを行なっている蒸溜所もあります。
【工程2】大麦麦芽のデンプンを糖化させる(糖化)
- 乾燥させた麦芽(モルト)を、粉砕させる。
- マッシュ状にする。
- マッシュタンで糖化させる。
- こす。
- ウォート(麦汁)の完成。
上記の工程1で、乾燥させた麦芽を、ゴミなどを取り除いた上で粉砕させます。
粉砕したものを『グリスト』と呼び、その大きさはハスク(大)・グリッツ(中)・フラワー(小)の3種類です。(※グリストの比率は2:7:1が一般的です)
粉砕した、それぞれの大きさのグリストに、約67度の温水を入れて混ぜ合わせ、マッシュと呼ばれる、ドロドロのお粥のような状態にします。
このウイスキーの工程のマッシュは、マッシュポテトのマッシュも同じ意味ですか?
お粥状のマッシュは、マッシュタン(糖化槽)に入れて、撹拌し続けます。
撹拌することで、デンプンが分解され糖化が始まり、併せてタンパク質もアミノ酸に分解され、ウォートと呼ばれる麦汁になります。
糖化が完了すれば、ウォート(麦汁)を濾し、一番麦汁という甘い液体を採取してから、温水を注いで二番麦汁・三番麦汁を確保していきます。
(三番麦汁は、次回の糖化作業で使用する、仕込み水で使いまわします。)
【工程3】ウォートを発酵させて『もろみ』にする(ファーメンテーション)
- ウォッシュバックへウォートを入れる
……酵母がイキイキと活性しやすいように、一度冷却してからウォッシュバックへ入れる。
冷却しなければ、投入される酵母が死んでしまうためです。 - 酵母を投入
……日本やアメリカの多くの蒸溜所は、ウイスキーの種類に合わせた酵母を使い分けます。 - シュワシュワと発酵が始まる
……炭酸ガスが次第に出始め、上がってきた泡を潰しながら、待つこと48〜72時間。
酵母が糖を食べることで、アルコールや炭酸ガスが発生する以外にも、様々な微生物が生まれ、ウイスキーの複雑な風味の土台となります。 - ウォッシュ(もろみ)の完成
……出来上がった、ウォッシュのアルコール度数は、まだ6〜7%。
ウォッシュバック(発酵樽)は、木製・ステンレス製など、材質が各蒸溜所により分かれています。
伝統的な木製は、元々木に住み着いている微生物などが、発酵の時に複雑な作用を与える恩恵の反面、清掃をはじめとする管理に、手間がかかります。
【工程】もろみを蒸留させる(ディスティレーション)
上記の工程3で出来たもろみは、アルコール度数6%〜7%のため、何度か蒸留することで、65%〜70%まで上げることができます。
- 単式蒸留器(ポットスチル)にウォッシュを投入
……ポットスチルは、白鳥のような姿で玉ねぎ型の、独特な蒸留器です。
形によって、ウイスキーの風味が変わるため、各蒸溜所ごとに微妙に違います。
大きく分けて、『ストレート型・バジル型・ランタン型』の三種類です。 - 下から加熱
……加熱の方法は、伝統的な石炭やガスの直火焚き、スチームパイプで間接的に加熱する方法の、2種類があります。 - 気化して分離できたアルコールが冷却機へ上昇
……冷却機で液状に戻す。
蒸留1回で、アルコール度数は約3倍に高まる。
出来上がったものを、『ローワイン(初留液)』と呼びます。 - 繰り返す(基本2、多くて3回)
……スコッチウイスキーは、2回の蒸留が基本。
二回目は別のポットスチルへ移し、1~4の工程を行いますが、合わせて『ミドルカット』という酒質ごとに分ける作業を行います。
冷却後、スピリッツセイフと呼ばれる箱で、ミドルカットは行われます。
- 最初に出てきた液を、フォアショッツ(ヘッズ)。
- 次の液を、ミドル(ハーツ)。
- 最後の液を、フェインツ(テール)。
最初と最後の液は、アルコール度数が高過ぎ低過ぎだったり、嫌な香気成分だったりと、不必要な部分の液なので、ウイスキーの質を保つために、カットしてしまいます。
この作業は、熟年の経験と、技術が必要な工程なんです。
蒸留が完了すれば、その蒸留液は『ニューポット』『ニュースピリッツ』と呼ばれ、無色透明な液になります。
【工程5】樽の中で琥珀色へと熟成(マチュレーション)
- ニュースピリッツに加水
……ニューポットは、アルコール度数が65〜70%のため、加水で63%前後に下げる。 - 樽に詰め熟成庫で貯蔵
……各種類の適切な樽に詰め、ウェアハウス(熟成庫)へ、長い長い年月をかけ貯蔵。
スコッチは、数年から10年、20年、30年の間寝かせる。 - 熟成完了
……長い熟成によって、樽から染み出した成分で、美しい琥珀色と奥深い風味や香りを供えた、素晴らしいウイスキーとなる。
度数が高過ぎると、せっかくの樽の成分が、ニュースピリッツへ溶け出しにくいためです。
樽の材質や保存中に置かれる環境で、ウイスキーの仕上がりは、多種多様に変化します。
例えば、ウエアハウスの床に輪木を敷いて、そこに樽が2〜3段積みあがるようにして熟成保管させる方法を『ダンネージ式』と呼びます。
その他にも『ラック式』『パラタイズ式』などがあり、規模の大きい蒸溜所ではダンネージ式とラック式を並行して行なっています。
ウイスキーの製造期間の90%以上は、樽の熟成期間で占められるため、熟成保管方法が非常に重要なポイントと言えるでしょう。
例えば、自社で樽作りから研究し、使用される木の年数や、年輪の密度までチェックし、管理しているのがグレンモーレンジ社です。
【工程6】瓶詰め作業(ボトリング)
ヴァッティングをしなければ、ウイスキーの味にバラツキが出ることが理由です。
ウイスキーは熟成期間中、樽が呼吸するかのように、周囲の環境に仕上がりが左右されます。
そのため、仕上がりが均一になるように、ヴァッティングする必要があるのです。
- ヴァッティングする
……仕上がりを均一にする。 - 払い出し
……様々なレシピを元に、いくつもの樽のウイスキーが、瓶詰め装置にセットされる。 - 冷却し濾過する
……ウイスキーの不純物を除くために、冷却濾過(チルフィルタリング)を行う。
※一部の商品には、冷却濾過を行わない『ノンチル』と呼ばれる商品もあります。 - アルコール度数を下げて瓶詰めをする
……精製水で加水して、40%前後にする。
また、あえてヴァッティングせず、その樽から取り出しボトルに詰めたウイスキーが『シングルカスク』です。
シングルモルト | 同じ蒸溜所内で造られた、複数の樽の原種をヴァッティングしたウイスキー。 |
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シングルカスク | 1つの樽から取り出したウイスキー。 |
ブレンデッドモルト | 他の蒸溜所のモルト原種を混ぜたウイスキー。 別名は、ヴァッティングモルト。 |
ブレンテッドウイスキー | 複数のモルト原種と、グレーンウイスキーを混合させたウイスキー。 |
シングルグレーン | 同じ蒸溜所内で造られた、複数の樽に入ったグレーンウイスキーを混合したもの。 |
混合した後、もう一度樽に詰めて熟成させる方法もあります。
これを、マリッジ(後熟)と呼び、1~2年後にブレンドしたのを、ダブルマリッジと呼ばれるウイスキーです。
まとめ
ウイスキーは、様々な工程と膨大な時間をかけて、一本が完成されます。
こだわる部分が多いため、少しの違いで、風味がガラッと変化してしまうこともあります。
次回は、代表的な5つのウイスキー生産国について、ご紹介していきます。